阪神 5―2 巨人 (10月5日・甲子園) 

巨人との差…わずかだが縮まった

グイッと搾りたてコラム「ナマ虎」

打ちのめされた訳じゃない

 あんな熱い抱擁はなかった。マウンドから下りてきた井川と握手するだけで終わった。

 まるで夢のような6カ月前。3月30日、まだ肌寒さが残る東京で星野監督は格別の笑顔で井川を出迎え、体をぶつけた。開幕勝利。それも巨人を倒しての勝ちに素直にうれしさを表現した。あれから―今年最後の巨人戦にまた井川で勝った。しかし、すべては宴のあと。「最後だし、不様な試合だけはしたくなかったから」と言い、星野監督の顔にはついに笑みは浮かばなかった。

 12勝15敗1分け。この対戦成績をどう見るか。またしても巨人との戦いに負け越した。開幕連勝で夢を見させてくれたけど、終わってみれば、いつもと同じ。阪神ファンの嘆きが聞こえてくる。だがずっと阪神を追い感じるのは、決して打ちのめされた気にならないことだ。巨人の破壊力に屈したわけではない。つまらないミスで自滅したり、流れを自ら放棄したり、それはごく小さなきっかけだった。

 だが、この差が埋めたくても埋められない差なのである。過去、歴代の阪神監督が「巨人だけには」と目の色を変えた。故村山実さんは常にローテーションを巨人に合わせ、意識のほどを示した。ただ、それでも越えられぬ壁。星野阪神は少なくても、その差を縮めたのでは、と感じている。

 試合後、三塁側ベンチの裏で原監督は口を開いた。「今年の巨人―阪神、伝統の一戦は盛り上がったんじゃないかな。開幕で連敗して、それだけに感慨深いものがある」。そう振り返ることのできる余裕が巨人には残る。

 3つの負け越し。球界を盛り上げ、巨人に善戦したのは間違いないが、阪神に余裕はない。井川で勝って始まり、井川で締めて28試合のG戦は幕を閉じた。「形としては、そうなったな」と言ったきり、今年の巨人戦を星野監督は総括することはなかった。すでに心は来季に。それを信じて、阪神ファンは待っている。

【編集委員・内匠宏幸(たくみ・ひろゆき)】


2002年10月6日付紙面掲載


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