来年の星野阪神はきっと強い

グイッと搾りたてコラム「ナマ虎」

保身に回らぬ…決意と覚悟

 いまから16年前の86年、広島の監督に阿南準郎さんが就任した。現在はカープで要職に就いているが、当時から目立たない人だった。地味で堅実。そんなイメージが先行し、実際、古葉前監督のコピー野球とか、山本浩二監督へのつなぎ役とか言われ、期待感も高くはなかった。

 本人も「それでいいんです」と認め、派手に振る舞うこともなかった。しかし、監督になったからには色を出し、長く務めたいと思うのが人間ではないか。そんなことを聞いてみたいと、2月1日、宮崎日南キャンプの初日を終えた夜、宿舎の部屋を訪ねた。快く招いてくれた阿南さんに、いきなり無礼な質問をぶつけた。「いつ監督を辞めてもいいというが、いずれ保身に回ることだってあるでしょ」―。

 すると阿南さんはこちらの目を見据えて「引き受けた時から覚悟を決めている。監督とはそんな立場でしょう。ただやることに手抜きはない。全力を出して、その結果がすべてなんだ。自分を守るとかは絶対に考えない」と言い切った。その年、巨人とのデッドヒートにケリをつけ、阿南さんは1年目でリーグ優勝を果たした。  なぜそんな事を思い出したかというと、3週間、タイガースを追い、星野監督と接し、星野監督にも「覚悟」を感じたからだ。阿南さんと星野さんでは注目度も違い、比較の対象にはならないだろうが、人間の根の部分で、ある種の共通項を僕は感じた。

 覚悟を決め阪神の監督に就任し、保身に回らず、責任はすべて自分にある、という気概が体から出ている。予想外の開幕ダッシュから、夏場に失速し、いまは借金を抱える。しかし萎えることはない。グチもない。いかに強くしていくか。3週間に何度も先に向かった話を聞いた。「このままでは終わらない。そして秋や。秋が大事なんや」と倉敷で行う秋季キャンプに思いを馳せる。たった3週間、みなさんに笑われるかもしれないが、来年は強くなると見ている。決意と覚悟を持つ人間は強い。

【編集委員・内匠宏幸(たくみ・ひろゆき)】


2002年9月7日付紙面掲載


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