阪神 3―3 巨人 (8月24日・東京D) 

長嶋さんもエール「Aクラス目指せ」

グイッと搾りたてコラム「ナマ虎」

星野さんうなずき胸に刻む

 改めて、その言葉を胸に刻んだ。オーラを放つその姿。口元からこぼれた言葉に星野監督はうなずいた。

 長嶋茂雄前巨人監督が東京ドームを訪れた。阪神の練習が始まったころ、三塁側ベンチに足を運び、裏の監督室で2人は対面した。阪神から監督を要請された時、「仙ちゃん、やりなさいよ」と背中を押してくれたのもこの人だった。「安芸キャンプでコーヒーをご馳走してもらうよ」と言って、この2月、実際に安芸キャンプを視察。コーヒーを飲み、そして若い浜中を指導してくれたのもこの人だった。

 チームを超え、「野球とは人生です」と言ったように、ユニホームを脱いだあとも情熱は衰えず、野球界全体を見渡した言動は、我々「長嶋時代」を過ごした人間にはやはり神様に見える。

 「阪神ががんばらないと盛り上がらない」常に巨人と対峙する阪神のことを考え、この日もまた、長嶋さんからそんな言葉が出た。

 「ここで踏ん張らないといけないよ。とにかくAクラスを目指して、がんばらなくちゃあ」。

 開幕から7連勝し、復活阪神を満天下に示したものの、100試合を過ぎて、ついに5割を割った。心配で、心配でたまらないといった風情で励ましにきた長嶋さんが試合中、NHKの放送席からずっと試合を追っている。その目の前で、星野阪神は踏ん張った。

 若い藤川が松井に真っ向勝負を挑んだ。6回裏、2点のリードを守れず、ついに力尽きてベンチに戻った時、グラブをベンチに叩き付け、見せた無念の表情。勝負をあきらめず、9回表に同点に追いついた執念。悔しがれ、そして執念を見せろ。戦いに不可欠な魂を持って、この夜、タイガースは戦った。延長12回、16三振を喫し、安打も巨人の半分以下だった。それでも負けなかった。

 放送中、長嶋さんは「昨年までなら、この時期になると、ただ試合を消化してというようなケースが多かったが、今年は違います」と盛んに阪神の変化を表した。あきらめないトラの姿は、ミスターの目にしっかりと焼きついたに違いない。

【編集委員・内匠宏幸(たくみ・ひろゆき)】


2002年8月25日付紙面掲載


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