阪神 10―3 広島 (8月21日・大阪D) 

山田“ひたむき”につかんだスタメン

グイッと搾りたてコラム「ナマ虎」

木戸コーチも久しぶりホッ

 一塁側ベンチ裏。笑いがあふれていた。久しぶりにスカッとする勝ちだ。ロッカー前のあちこちでヒーローが番記者に囲まれていた。その中に山田もいた。こちらも久しぶりの先発マスク。なんとか投手陣に大きなダメージを与えることなくリードし、打っても2安打。ヒーローのひとりとして、価値ありの働きだった。

 横をニヤッとしてコーチが通り抜けた。バッテリー担当の木戸コーチだ。今、阪神の中で、頭を痛めているコーチのひとりだ。矢野の故障―戦列離脱によって余儀なくされた捕手のやりくり。20日まで若い中谷を思い切って起用してきたが、この日は山田を先発に使った。「中谷はまだまだ未熟ですよ。それを分かって使ってきたが、山田にもチャンスを与えなければ。ファームでクソッと思ってやって、上がってきたんだから」。決めるのは星野監督だが、変更の背景は投手との兼ね合いとともに、ひたむきさなどメンタルな要素も加味されている。

 そういえばこんな話もある。シーズン序盤、矢野の1度目の故障の時、吉本が登用され、その時、星野監督は「ガムシャラによくやっているやないか」と褒めていたものだ。それが19日、吉本はファーム行きを宣告されている。理由は? 木戸コーチははっきりしている。「あのころのようなひたむきさがなくなっているから」―。

 山田、中谷、そしてルーキーの浅井。この3人が1軍にいるが、はっきり力不足は否めない。それでも矢野が今季絶望なのだから、だれかを使っていかねばならない。「使いながら、育てていくのが理想だけど、ウチにはそんな余裕はない。勉強しながら、なんてこともできませんよ」木戸コーチが言うように、捕手陣もまたギリギリのところで戦っている。

 そんな中での山田の活躍だ。試合後、必ず声を枯らして出てくる木戸コーチも久しぶりにホッとしたに違いない。ただ、それもひと時。コーチに満足の2文字はない。

【編集委員・内匠宏幸(たくみ・ひろゆき)】


2002年8月22日付紙面掲載


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