ノムさんに嫌われて成長した今岡

星野への軌跡

打つだけの選手から守りも開花

 井川が投の柱なら、打のリーダーは今岡だろう。昨年は1番として活躍。ようやくひと皮むけたかな、と頼もしく見ていた。

 この今岡を語る時、野村前監督との関わりを避けて通るわけにはいかない。いつもノムさんに嫌われた今岡、と言われていたが、実際、ノムさんは今岡が嫌いだった。プロ野球で好き嫌いで起用法が変わるなんてことは、本当はあってはならないことなんだろうけど、今岡の場合、これが当てはまっていた。

 ただノムさんはその性格がイヤで嫌いになったわけではない。その当時の今岡の野球に対する姿勢が気に食わなかったのだ。試合後、よくノムさんのグチを聞いたものだ。「今岡というのは、ユニホームを汚さない子だな」というのが口癖だった。

 ユニホームを汚さない。ノムさん流の表現で、守りの際、今岡は球際に弱く、決して無理しない。ユニホームを汚すようなプレーがないと評価していたわけだ。具体的にいうと、例えば相手打者がファウルを打つ。その時、ノムさんはベンチから今岡の守備の動きを見つめているのだが「両ひざに手を置いて構えているのだが、普通ファウルが飛ぶと、ひざから手が離れ、どちらかに足を動かし、スタートを切るだろ。ところが今岡はひざに手を置いたまま、顔を打球方向に向けるだけ。動かないんだ。あんな内野手は、見たことないわ」と不満をいつも口にしていた。

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 いつの間にか、闘志が表に出ないタイプの今岡が、ノムさんに干され、あげくに2軍行き、と不仲ばかりがクローズアップされたが、実は技術的な部分でノムさんは今岡に対し、低い評価しかできなかったのである。

 「打つだけの選手になってほしくない。今岡はもっと守備にも真剣に取り組まんとイカン」と言い続けたノムさん。星野監督に代わってブレークした昨年だったが、それ以前の辛い体験がプラスになっているともいえる。ノムさんに嫌われ続けた今岡だったが、いまとなっては、ノムさんに感謝してもいいかもしれない。

<写真=闘志を表に出せと今岡を激励した野村監督だが…>


 本間勝(ほんま・まさる)1939年(昭14)5月1日生まれ、63歳。愛知県出身。中京商から58年、阪神に入団。60年5月15日の巨人戦でプロ初勝利を挙げ、同年13勝をマークした。66年に西鉄に移籍し、67年のオフに現役引退。実働10年で216試合に登板。28勝38敗、通算防御率2・86.引退後、新聞社に勤めスポーツ記者を経て、阪神球団に勤務。広報担当として活躍。名物広報として阪神の激動史に携わってきた。



2003年1月21日付紙面掲載


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