すべてにスタイル崩さぬ井川

星野への軌跡

カッコつけず若さに似合わぬ落ち着き

 タイガースの過去を振り返ってきたが、気がつけばキャンプまであと10日と迫っている。今季は星野監督2年目での優勝に期待が高まっているだけに、この連載も、これからは前に向いて続けていきます。

 今年も投手陣の柱になるのが井川でしょう。この若きエースはとにかく考え方がしっかりしている。周囲に惑わされることなく、自分のスタイルを貫ける強さを持っている。練習、試合、余暇、すべてにおいて、スタイルを崩さない。

 笑い話のようなエピソードを紹介する。まだ若いから遊びたい盛りと思うが、井川にはそんな浮ついたところがない。例えば遠征に出ても、財布の中はいつも1万か2万円しか入っていない。野球選手といえば遊び方も豪快なイメージがあるが、井川は実に質素。キャンプでも、たまの休みに安芸から高知に買い物に出かけるが、井川は往復を路線バスに乗る。タクシーには絶対に乗らない。

 これをあるコーチや選手が注意した。「オマエくらいになれば、タクシーに乗れよ。バスで往復するのはちょっとな」。私もこの話を聞いていたが、井川はまったく意に介さず。「いや、ボクはこれでいいんです」とカッコつけるところがなんにもない若者なのだ。

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 ただ1度だけ私のところに珍しく怒ってきた。2年前だったが、井川が巨人戦に投げる直前、担当記者の取材に「巨人戦ですか。まあオリックスのファーム相手に投げるのと同じです」と答えた。井川にしたら、あまり意識せずに投げますと言ったつまりが、あるスポーツ紙に「井川、巨人はオリックス2軍と同じ」と、巨人を見下したような発言に取られ、掲載されてしまった。「こんなつもりではないのに」と抗議してきて以来、井川はどうも口数が減ってしまった。

 星野監督も気にはなっていたのだろう。しかし期待しているから、私のところに監督直々、こんな要請があった。「井川に関しては、オフの行事や取材を極力受けないようにしてほしい。まだ若いし、チヤホヤされて勘違いせんように」と。

 それほど監督に思われている井川だが、心配は無用でしょう。若さに似合わぬあの落ち着きがあれば、今年も間違いなく活躍しますよ、アイツは。

<写真=ドタバタの日帰りツアーとなった井川=タイガーデン>


 本間勝(ほんま・まさる)1939年(昭14)5月1日生まれ、63歳。愛知県出身。中京商から58年、阪神に入団。60年5月15日の巨人戦でプロ初勝利を挙げ、同年13勝をマークした。66年に西鉄に移籍し、67年のオフに現役引退。実働10年で216試合に登板。28勝38敗、通算防御率2・86.引退後、新聞社に勤めスポーツ記者を経て、阪神球団に勤務。広報担当として活躍。名物広報として阪神の激動史に携わってきた。



2003年1月20日付紙面掲載


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