阪神 0―5 中日 (5月1日・甲子園) | ||||
目先の勝利も大事、将来の青写真も大事ファンのため、チームのため試行錯誤5月最初の甲子園は朝方まで残った雨のため、試合前の打撃練習は三塁側室内練習場で行われた。その室内で視察を終えた星野監督が大勢の報道陣を引き連れ、三塁ベンチ前を通って一塁側ベンチに戻る。その時、中日山田監督は三塁側ベンチで談笑中。昨年まで同じ三塁側のベンチで監督、ヘッドコーチとして阪神と戦っていた2人が指揮官としてスレ違う。1年前には考えられない光景だった。 昨年のゴールデンウイーク。5月4日から甲子園で3連戦を戦った中日星野監督は三塁側ベンチ裏にあるビジター用監督室でこんな話をしている。「目先と将来のどっちが大事か? それはどちらも大事なんだよ。オレは両方を追いかけていく」。チームは勝率5割ラインをいったりきたり。V奪回を目標としていたが、波に乗り切れないチームに頭を悩ましながらも、その日、その日の戦いに全力を尽くし、一方で将来の青写真を描く作業を捨てようとはしなかった。 プロ野球が興行である以上、球場に訪れるファンにみっともないゲームは見せられない。だから一瞬たりとも気を抜かず、全身全霊で指揮を執ろうと心がける。一方で将来のチームのあるべき姿を忘れない。星野監督の言う「両方を追いかける」にはそんな意味が込められている。どちらかを捨てることができれば、リーダーの負担はかなり軽減するだろう。だが、その両方に挑む。1年前の5月の時点でオフの山田監督への禅譲を決意していたかどうかは本人のみぞ知るところだが、後継者を育成し、バトンを渡すことも自分の役割の一つ、という強い覚悟が感じられた。 「怒られてばっかりでさ。ホント、五寸くぎでも用意してやろうかな」。星野監督が山田監督と目線であいさつを交わした直後。三塁側ベンチ前を通りかかった田淵チーフ打撃コーチが山田監督に「調子いいねえ」と声をかけられると胃のあたりをさすりながらジョークを返した。これが怒られたためなのかどうかはともかく、このゲームも1、2番を組み替えるなど目先の戦いをどう乗り切るか、試行錯誤を続けている。一方で将来の主力選手はだれなのか。指導者に最も適した人物はだれで、そのリーダーを支える黒子の役割は、といった観察と指導は続いていく。「オレに(人事の)決定権はないよ。でも、だれがいいかと聞かれたら、答えられるようにはしとかないとな」。この夜は古巣に完敗した星野監督だが、今後も“遠近両用メガネ”を外すつもりはない。 【安藤宏樹】
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2002年5月2日付紙面掲載
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