
なにげない言葉でチームを一丸へ
トレード示唆し危機感あおり… 危機には一転、雑音封じ
3回までに8失点…去年までの阪神なら間違いなく戦意喪失、無条件降伏していたに違いない。しかし5回からコツコツと反撃を開始し、終わってみれば12安打7点。終盤になってカープ首脳陣を慌てさせた。1敗の悔しさより、この驚異の粘りの方が今の星野阪神には尊い。それを陰から支えているのが、星野監督の巧妙な広報戦術なのだ。
試合前の宿舎。春雨を横目にしながらのランチトークで、星野監督は突然補強の話題を口にした。「トレード? 編成の方はどうか知らんが、オレは1年間はしないよ。自分の目で見なきゃいかんと思っているからね。眠っている戦力をたたき起こすのが、最大の補強やないか。いい加減なことは書かんようにな。選手が傷つくからな」。額面通りに受け止めればトレード封印宣言となる。しかし星野監督といえば、中日時代から何度も大型トレードを敢行してきた実績がある。就任直後も「血を入れ替えないと強くならない。純血だと、なあなあになる」と発言。大型トレードを示唆してきた。それが一転、封印宣言だ。トレード可能な期間は6月末日で、時間的にもまだまだ余裕がある。果たして素直に受け取っていいものか、報道陣が戸惑うのも当然だろう。
気になるとすれば、今この時期にあえて発言した狙いだ。歴史的開幕ダッシュを果たしたものの、思わぬアクシデントでチームを支えてきた矢野、赤星が戦線離脱した。ここで負けが込むようなら、トレードなどの緊急補強の報道が出かねない。それを未然に防ぐため、先手を打ったともとれなくない。
雑談中、星野監督は日本ハムの札幌移転問題でも持論を展開した。「どうして(西武は)移転に反対するの? ヘソを曲げてる? それはプロセスの問題やろ。日本人は、そういうのが下手やからね」。この言葉の裏を返せば、星野監督がいかにプロセスを大事にしているかが分かる。問題がこじれる前に、事前に最善の手は尽くしていたか。阪神に置き換えれば、それは現在の好調なチーム状態を維持するにはどうすればいいか、ということになる。矢野の39、赤星の53を帽子に書き込んでプレーする一丸ナインを指揮官としてどう見守ってやれるのか。その答えが、トレードなどの外野の雑音をシャットアウトすることだったに違いない。
就任直後はトレードを示唆してチーム内に危機感をあおり、一丸にならねばならないと感じた時は逆に周囲の雑音封じに最善を尽くす。何気ない星野語録の中に、星野監督の思惑も見え隠れするのだ。
【阪神担当キャップ=木崎輝三】

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