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島野ヘッドは「子分」ではなく「盟友」
互いの油断や慢心許さない緊張関係紅白戦が始まって白軍のサードコーチャーにヘッドコーチの島野が立つとスタンドの観客から声がする。「ホラ、あの背番号78。あれが星野の有名な子分だよ」。熟年の男性ファンが指差すと傍らの奥さんがウンウンとうなずいて「あの人も怖そうね」と言った。 星野の右腕と言えば島野に決まっている。中日時代の2度の監督の際も、この阪神に来ても星野の横には島野がいる。島野のファンクラブではだから「星影の会」というのだそうだが、島野を指して「星野の子分」と言ったら星野はきっと怒るに違いない。 「あれはおれの盟友だ。33年のおれのプロ野球人生の同志なんだ。監督、コーチと地位や役職は違うが、簡単に親分だ子分だという見方はするな」 ルーキー時代、星野は先輩の紹介で中日から南海(現ダイエー)に移っていた島野に引き合わされた。星野は島野の豪気な性分とその野球観に共鳴し、島野は自分より3つ年下だが勝ち気で頭のいい星野になにかの予感を覚えたらしい。その初対面から33年。2人はまたもや監督と参謀としてスクラムを組み、3度目の挑戦をするのだが、星野が島野を子分と言わず、あえて盟友と呼ぶ、その根拠にふさわしい話を2人から聞いたことがある。 ある試合で前半あっという間に6、7点を取られて星野が半ば試合を投げた。ところがこれが乱打戦になって8対10までもつれて試合に負けると島野が監督室に行って星野を怒鳴った。「きょうの戦いはなんですか。いつも選手にはなんと言っていますか」。以降これは短気な星野の戒めの一つになった。 プロ野球の世界にも強きに弱く、弱きに強い、上司に甘く、同僚や部下には厳しい凡人がごまんといる。しかし、ましてや相手が星野だが、その星野に万が一にもスキがあったらこれからも島野は星野を決して許さないだろう。 ある日の試合前に島野が記者につかまってベンチでしゃべっていると星野がにらんだ。「おい、選手の動きを見とらんでええのか。選手が動いとんのに、コーチがぺちゃくちゃやっててええんか」 選手のケガや故障の状態、心技のコンディションは各コーチやトレーナーからも聞いている。しかし試合前の選手たちの動きを実際に自分の目で確かめ、把握していないで自信を持って監督に対してその起用についての判断や進言が下せるだろうか。人間は一事が万事だ。島野は14年前のナゴヤ球場でのこの一件を今も忘れずにいて、参謀としての日常の戒めの一つにしているらしい。 星野には常に大切な方向を指し示す者にありがちな威厳のようなものが垣間見える。島野には少々のことでは鳴らない吊り鐘のような貫録がうかがえるが、2人に共通しているのは周囲に与える怖いような圧迫感だ。 やさしいだけのいい人は好かれても尊敬はされないし、人を動かしてはいけないものだが、常に真剣で必死で、まじめな人ほど怖い印象を与えるのがまた人間だ。星野も島野もこうした分類では同種類の男同士なのだろう。長年の信頼関係も2人の間に油断や慢心、怠慢などを共通の敵とする真剣な緊張感があって成り立ち、続いているのかもしれない。 「あの人も怖そうね」。スタンドの観客の中の奥さんが「も」という意味はもちろん77番の星野も78番の島野も、という意味であることはいうまでもないだろう。(敬称略)
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2002年2月22日付紙面掲載
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