筋を通す、迎合しない、これぞ仙

星野の挑戦in安芸

私をスカッとさせた3つの話

 昨日から今日にかけて、私の気持ちをスカッとさせてくれた星野の「三態」をご紹介する。

 @は出版社系A週刊誌記者とのやりとりだ。大阪に移って、名古屋ナンバーの車に乗っているわけにもいかない。さて、と考えている星野に名古屋の看板企業トヨタから餞別代わりに新車が贈られるという話が他誌に出ている。「それは本当ですか」と記者が聞くなり、星野が制した。

 「それはどこの週刊誌だ。バカなことを言うな。トヨタの会長もよう知っとるが、トヨタに失礼な話だろう。トヨタと接点があるのはおれだけじゃない。そのおれだけに餞別だの、プレゼントだの、他の人にも失礼だ。確実性と合理性のトヨタがそんな考え、そんな真似をするわけがない。あなたも常識でそう思いませんか」。星野は自分に関する週刊誌の記事がトヨタに無礼を働いていることに目をとんがらせた。

 Aは監督専任の広報、山中、平田両広報課長に耳打ちをしたその伝達内容だ。球場の本部席や食堂へ、あるいは宿舎であるホテルへ毎日いろいろな客がある。応援団体グループ、事業・企業グループ等々。星野阪神との新しい接触や付き合いを求める人たちも中には当然混じっている。

 名刺のタバをポケットにしまう2人の課長に星野はそっというのだ。「いいか。これまでと変わらずにきてくれる方と、にわか阪神ファンとは目に見えない一線を画していけよ。どっちをまず大切にしなけりゃいかんか。わかるよな、もちろん」。窓口はだれにでも開いているがしかし、自分の窓口係の2人には念のため「心のカギ」のご用心だ。

 Bはテレビ朝日・渡辺宜嗣アナから収録インタビューを受ける直前のテレビには映らないところでのヒトコマである。愛知県出身で、渡辺アナは中日ファンとしてもお茶の間で有名だから、収録の前にまず星野が意地悪く切り込んでいく。「宜嗣(のりつぐ)さん。あなたと私の仲だ。これからはタイガースファンやろね」

 渡辺アナはすかさず答えた。「いいえ。ドラゴンズファンですよ、私は。これからもずうっとね」。さすが誠実なジャーナリストと目される人。自分の基準を揺さぶることなく、調子を合わせたり適当なことをいったりはしない。

 しかしこの返答に破顔一笑。星野がご機嫌になった。「中日のファンでも阪神のファンでも、どこのファンでもいい。本当のプロ野球ファンなら」という思いかもしれないが、本当のところは親しいテレビアナウンサーの安易に迎合しない、筋を曲げない姿がうれしかったのではないだろうか。ホテルの応接間での収録は、当初30分の予定が倍の1時間に延びた。(敬称略)

 三浦勝男 1939年(昭14年)、神奈川県生まれ。明大卒。62年、日刊スポーツ新聞社入社。巨人、中日担当、野球部長、編集局長、役員などを経て、現日刊スポーツ新聞社顧問。現在は多方面で執筆活動中。星野監督とは中日入団以来、33年間の交友。



2002年2月17日付紙面掲載 


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