マスコミとの共存共栄に腐心

星野の挑戦in安芸

 新聞記者が近づいても無視したり、しっしと野良犬でも追い払うような仕草をするベテランもいる。逆に新聞記者につかまると、怯えたような顔をする若手もいる。星野はそんな様子を散見して心配したのだと思う。マスコミとの付き合い方について、折に触れチーム内で語っているようだ。

 関西マスコミにとってメーンはなんといってもタイガース。雨が降ろうと槍が降ろうとスペースをたっぷりとって1面もタイガースで飾りたいのが常だ。しかし、こうして長いトンネルから脱出できないでいると、とかく暗いニュースが多くなる上に、批判や攻撃の矛先がフロントや監督、コーチばかりでなく選手にも向けられていく。マスコミとの対立はドロ沼状態というよりは、もう一種の悪循環である。

 最近では前監督野村と担当記者間のあつれきが有名だが、マスコミには「質問の受け答えもかみ合わず、性格も変わっている」と見られていた新庄が大リーグに移った途端、別人のように純情率直、ユニークで明るいキャラクターを200%出して見せて拍手喝采を浴びている。今もって阪神時代の新庄は何だったのかとチーム内で話題になっているのだが、新庄はいわばマスコミと通じ合えなかった選手の代表かもしれない。

 星野タイガースの人気はうなぎ上りで、安芸には連日、250人を超えるマスコミが到来。球場も選手宿舎もてんやわんやのありさまだ。ベテラン記者の「長嶋時代の宮崎以上のにぎわいだ」という嘆声もうそではないし、評論家諸氏も口々に「長嶋が去ったあとは星野に盛り上げてもらわんと」とその人気に改めて目を見張っている。

 こうした状況の中で、熱視線を自分ひとり一身に受け止め、星野が肝心の選手たちとマスコミとの関係改善−良好で発展的な協力関係に腐心するのは監督として当然のことだろう。

 「マスコミの人たちともフランクに、一人間対一人間として接する気持ちになってみたらどうか。あそこの新聞はいやなことばかり書いてきた。あそこはあの球団系だからとか、社名や先入観で見ずに、記者個人の人格や人間性と付き合う気持ちになったらどうか。それが自然で大事な人間関係というものだ。周囲に対しても取材ということに対してもきちんとした自分というものを作っていこう」

 キャンプ2日目のこの日も行われた担当記者全員を20人ずつ交代で選手食堂での「朝食会」に招き入れることもその一つ。色分けや差別を一切しないで、毎日開く取材会見もその一つ。星野自身が今、それを身をもって実践し始めているようだ。その一方では事実に反するマスコミ報道には決して泣き寝入りはしないという決意を固めて、キャンプ前に私設弁護士と契約を結んできている。マネジメントにぬかりのない星野らしいところだが、舞台裏でもタイガースの「開明」にさまざまな腐心をしているようだ。(敬称略)

 三浦勝男 1939年(昭14年)、神奈川県生まれ。明大卒。62年、日刊スポーツ新聞社入社。巨人、中日担当、野球部長、編集局長、役員などを経て、現日刊スポーツ新聞社顧問。現在は多方面で執筆活動中。星野監督とは中日入団以来、33年間の交友。



2002年2月3日付紙面掲載 


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