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久万オーナーをも叱責する星野の生き様
宿舎のロビーで日刊のトラ番キャップ木崎を見つけると、星野はいきなりこう言った。「きょうのコーチ会議で、あんたの持論を言っといたからな。これからも正しいこと。適切なことはどんどん言ってくれ」 星野は選手からだけではなく、担当記者からも「再建リポート」を集めたが、要約すると30項目に及ぶ正論があったという。順次発表していくその中から、星野はキャンプ初日、木崎の意見をまず会議の冒頭に掲げたらしい。いわく、人集め、人育て、人使いを真剣にやれ−−。 地位、肩書にひるまず恐れず2カ月前。初めてオーナーの久万に会った時、星野はずけずけとものを言った。「オーナーになられて何年になるんですか」「17年かな」「その間、優勝したのは何年ですか」「1年だけや。オーナーになって初めての年。吉田(監督)の時やった」「それからずっと低迷しっぱなしですね」「そうなんや」。やりとりは続く。「その低迷の責任はオーナー、失礼ですがすべてあなたの責任ですよ。人作り、組織づくりをオーナーは本当に真剣にやってこられたんですか。球団社長以下の人事権からカネから、すべてを握っているオーナーの責任ですよね。野球を知っている、知らないの問題ではありません。大電鉄会社を率いながら一方で、球団の掌握と経営は随分とおろそかにされてきたんじゃないですか」 木崎も言っている。そしてリポートに書いた。「ドラフトでもFAでも、ただとりやすい選手をとるだけ。たとえ指名を拒否されていても、この選手はチームに絶対必要だからといって、強引に指名したことがここ10年、20年、1度でもありましたか。一事が万事。球団が真剣にやっていなければ、個人も組織も強化、充実されるわけがない」。 話の途中で星野はオーナーに「無礼者。あんたにきてもらわんでもええよ」と言われることも覚悟したらしい。黙りこくって動かない81歳のオーナーに、心臓発作でも起こしたのではないかと心配になり、秘書の顔を見ると「大丈夫です。ご心配なく」とうなづくシーンもあったという。 オーナーが口を開いた。「あんたの言う通りやな。1年目にすぐに優勝して、楽観的になって、球団にはついイージーになっとったかもしれんなあ」と。これはオーナーの懐の大きさだろう。だが、だれに対してもその地位や肩書きに、ひるまず恐れずとらわれず、という生き方をする。こういうところが星野の真骨頂の一つだ。「地位にしがみついて言いたいことも言えず、常に球団の顔色をうかがわなければならないのなら、監督やコーチになりたくない」と言って星野は14年前、4年間の評論家時代で3億円の蓄えを作ってから初めての監督のユニホームを着ている。 そんな星野の人集め、人育て、人使いの「チーム作り」がついに始まった。トラ番キャップの胸の中にも今までにない期待感が、少しずつ頭をもたげてくるのではないか。(敬称略)
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2002年2月2日付紙面掲載
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