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選手管理も「俺に任せろ」

星野の挑戦

夜更かしも不振の要因

 ホテルの夜の食堂で、監督、コーチが1つのテーブルに集まって食事をしている時だ。コーチの1人が「ウチの選手は普段の行動や、グラウンドに散ったり集まったりする時、なにかのろくさしてないか」と口をきった。若い選手が多いのに私服で動いている時でものろのろ、のろのろしているようにも見える。グラウンドに出ても号令一下、ぴっぴっという動きになんとなく欠ける選手がいる。

 星野は黙って聞いているが、頭がかすかに頷いている。もう1人のコーチが食堂のテーブルに散らばって食事をしている選手の頭数を目算していく。遠征時の選手数は30人前後だが、ナイターが終わってから今、ホテルの夜の食堂にいるのは15、16人だ。デーゲームの門限は24時で、ナイターの日の門限は25時だが、少なくとも今夜も10人くらいの選手が外食に出ているようだ。

 キャンプ前にコーチの田淵がマスコミを通じて、地元大阪や東京、横浜、名古屋、広島などに、大勢いる選手たちのタニマチに向かってお願いの声をあげた。「夜の街に遅くまで選手を引っ張り回さないでください。間違っても“あと1時間おれよ”なんていわずに、選手を早めに帰してください」という夜の接待短縮の要望だ。

 チーム内情と夜の街と、親しいファンたちの声を総合すると、どうも阪神の選手たちも夜更かしと朝帰りが多いらしい。1回や2回の門限破りは目をつぶっても、野球は「集中力」と「反射神経」の競技だから、生活態度にマイナスが生じるとてきめんに日々のコンディションに響くのである。

 それが不振や故障の要因になったり、不注意によるケガにつながったりするのだが、どこのチームも、また阪神も血気盛んな若者が主体の集団。なかなか適格な監視の目が行き届かないのが実情だ。

 泊まるホテルはみんな大ホテルで出入り口やエレベーターも何個所もある。全員個室だから朝帰りして昼前後まで寝ていてもわからないし、深夜彼女のところへでも行くのだろう。スリッパに紙袋をさげてぱっと迎えの車に飛び乗るツワモノだっている。

 若くてもプロなのだから要は本人の自覚次第ときれいごとをいっていられるのは他人で、チームの財産たる選手を守り、管理していく責任は監督以下のコーチ陣にあるのだから、ましてや阪神は昨年も遠征時の成績が22勝46敗2分け。基本的な原因はどこに? となれば田淵の心配も、ほかのコーチたちの懸念もひと通りではないだろう。

 ハシを持った星野の手がふととまる。「記者連中も“朝帰りなんて以前の話で今、そんな度胸のある奴はいませんよ”なんていってるが、普段のことはちゃんとせんといかん。…まあ、チェックの方法はおれに任せろ」といって星野がぐるりとコーチたちの顔を見回す。

 そのチェックの方法とは――。星野がもちろんそんな策をいちいち口にするわけがない。いいスタートを切ったからといっても今夜のような苦戦もあってシーズンはまだまだこれから。星野の脇は甘くないぞ。

 (敬称略)

 三浦勝男 1939年(昭14年)、神奈川県生まれ。明大卒。62年、日刊スポーツ新聞社入社。巨人、中日担当、野球部長、編集局長、役員などを経て、現日刊スポーツ新聞社顧問。現在は多方面で執筆活動中。星野監督とは中日入団以来、33年間の交友。



2002年4月5日付紙面掲載 


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