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夏場を意識してスキのない起用

星野の挑戦

「仕事とは準備なり」

 話はオープン戦の時期にさかのぼる。3月19日、オリックスとの試合で5回、片岡の中前打で同点とした直後のことだ。左足太ももを痛めている片岡に代走が出たのだが、ベンチにいる選手たちも、ネット裏球団室で見ているフロントの人たちも、星野が代走に指名した選手の名前を聞いてギョッとなった。

 ふつうなら高波をはじめ代走要員は何人もいる。ところが星野が指名したのはなんとバッティングが売り物でテスト入団したばかりのホワイトだったのである。ベンチでもよく声を出し、出塁すれば巨漢ながらヘッドスライディングを敢行するホワイトの、足よりむしろ燃える闘魂を買った星野ならではの感性である。

 「あれでこの監督はどんなさい配をふるうか、どんな選手起用をするかわからんぞ≠ニいう受け止め方がベンチ全員に浸透した」とコーチもフロントもいっていた。全員が常に状況の変化に備える、有事への準備をしておく。一流チームなら当たり前になっている「仕事とは準備なり」「仕事とは他に先がけて先手、先手と働きかけること」の大事と必要性を改めて悟った、とみられている。  「当たり前のことだろう。ろくすっぽ準備もできていないようなやつを、コーチがいってきてもピンチヒッターになんか使うか。おれは細かいことはすべてコーチに任せるが、基本的なことと、野球への取り組み方についてはいくらでもいうんだ」

 2日おいた岡山での広島とのオープン戦では、ベンチに引っ込んでいた今岡に状況判断というものを教える場面があった。5点リードしている8回2死一、二塁で東出に右前タイムリーを浴びた場面だ。外、内野はとかくきゅうきゅうとしてバックホームに懸命になりがちだが、星野は繰り返して今岡にこういうのだ。

 「二塁ランナーは足のある木村拓だろう。バックホームして間に合うか? 5点差もあるんだ。まずランナーを進ませない、ランナーを食い止める方が大切だろう。確実に勝っていくにはいつも試合の流れや動き を考えながらプレーしていけよ」

 20人近い野手は状況や調子を見極めては入れ代わり、立ち代わり次々と使う。ロングランの戦いを考慮しての幅をもったさい配のひとつだろう。この日の第3戦目のスタメンには桧山に代えてホワイトや、藤本に代えて沖原を使ったりと、今から夏場までを意識しながら油断もスキもない選手の起用ぶりである。

 7回2死一、二塁で横浜は代打の切り札・中根を出してきたが、ここは中飛で終わったもののこの場面では今岡の頭に、オープン戦の時の星野の話がよみがえっていたのではないか。「首位」をキープし続けたオープン戦と、開幕3連勝のペナントレースは直結しているという一例である。

 (敬称略)

 三浦勝男 1939年(昭14年)、神奈川県生まれ。明大卒。62年、日刊スポーツ新聞社入社。巨人、中日担当、野球部長、編集局長、役員などを経て、現日刊スポーツ新聞社顧問。現在は多方面で執筆活動中。星野監督とは中日入団以来、33年間の交友。



2002年4月3日付紙面掲載 


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