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巨人の特別視に激怒

星野の挑戦

「上に立つ人間として偏向持たない」

 星野が巨人戦を特別視することを嫌っている−ということを改めて知ったのは去年の夏のことだ。彼がまだ中日の監督の時だが、チームが上京していた際、常宿のホテルに電話をしながら「きょうは巨人戦だし、会いに行くのは別の日にするかな」といったら、その途端、星野が電話の向こうで烈火の如く怒りだしたのである。

 「巨人戦の日だから? 巨人戦だからどうしたんだ。巨人戦の日だからおれになにかあるというのか。なんでそんなこというんだ。なんで巨人だから、巨人戦だからって特別なことのようにいうんだ」。8月のある暑い日の午後のことだが、星野のアタマに突然、わたしはキノコをいっぱい生やしてしまうようなことをいってしまったようだ。

 わたしがいった意味は、巨人戦で上京している時のホテルには担当記者の一行のほかに、NHKをはじめ放送関係のアナウンサーやプロデューサー、出版社関係の人たちやいろいろなゲストも多いので、そこにわたしまでが行けば忙しくさせるばかりだ。取材陣や訪問客で混み合わない別の日に会いに行った方が迷惑をかけずに済むかな、という意味だったが、星野はもうカンカンになって怒るのだから困ったのである。

 なにもかも巨人を中心にして回ってきた日本のプロ野球。とかくマスコミもOBたる評論家も、フロントも経営者たちも巨人に寄りかかり、巨人一辺倒になり、ファンや子供たちまでが、日本中が巨人党になっていることが日本のプロ球界の前進や、新しい活動や発想を阻害している−というのが星野の普段からの意見であり、主張だ。

 わたしの電話での応答がうっかり星野のその琴線に触れ、突発的なスパークを生んだのだろう。  星野といえば「打倒巨人」の権化のようにいわれ、評されてきたのは事実だし、選手時代からのキャリアもそれをきちんと裏付けているのも周知のことだ。しかし、監督になってからの星野は用兵采配、つまりローテーションや選手の評価づけで巨人重点主義をとってきたりしてはいない。

 「相手が強力なチームで注目度も高いところからテンションが高くなることはあるが、戦っていくうえに偏った考え方や動き方をしていくのは邪道。いつも常に、どの相手に対しても同じ水準、同じ質、同じ力で全力を尽くして、勝負の上にプラスアルファが生じ、電光電撃が走るものだ。おれは上に立つ人間として偏向は持たない」

 星野の魂とでもいうべき、これが本音だ。この4、5年、セ・リーグのお荷物といわれた阪神が巨人を相手の開幕戦に連勝した意味合いは大きいのだが、日付が変わる2時間前にもう星野の頭は次の横浜戦にスイッチは切り換わっているように思う。間違いなく。

 (敬称略)

 三浦勝男 1939年(昭14年)、神奈川県生まれ。明大卒。62年、日刊スポーツ新聞社入社。巨人、中日担当、野球部長、編集局長、役員などを経て、現日刊スポーツ新聞社顧問。現在は多方面で執筆活動中。星野監督とは中日入団以来、33年間の交友。



2002年4月1日付紙面掲載 


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