spacer
阪神―横浜<雨天中止> (5月20日)


2000年の戦い
井関真


連載目次

森下さん、大石さんが指摘

「秀太の守り甘い」

 最近、評論家の人と話していて、立て続けに気になる“酷評”を聞いた。「阪神は去年と比べて特に変わったという印象が薄い。逆に内野の要の田中の守りが弱くなっている」というのは、主に名古屋で活動してもらっている森下正夫さん。これとソックリな言葉を、大石大二郎さんも口にした。「阪神の去年との違いは田中の守りが悪くなっている点です」。

 田中はキメ細かい野村野球の担い手の1人だ。単に打ったり走ったり守ったりするだけではない。例えば打者有利なカウントになると必ずバントの構えをして相手投手を揺さぶったりして、数字に表れない所で戦力になっている部分も大きい。20日現在、失策数も4で決して多い方ではない。レギュラー定着で、守りにはゆとりも生まれたように見える。

森下さん「1歩目の動きおかしい」

 「内野手のスタートは大体前、横、斜め後ろの3方向だ。ところが田中には2方向しかない。横にスタートするべき打球に斜め後ろのスタートを切っている。一塁できわどいタイミングになることが、今季は多いんじゃないか」と森下さん。球史に残るかつてのファイターは、田中の打球への反応が消極的過ぎるというのだ。実は大石さんも同じような見方をしていた。

大石さん「打ってから動いている」

 「打者のインパクトの瞬間の見極めが甘いように思うんです。ある程度経験を積めば、一瞬の見極めはできるはずです。しかし田中は相手打者が打ってから動いている。去年はもっと鋭かったように思うんですが…」。

 森下さんも大石さんも、内野手として長らくレギュラーを張った人だ。素人目にはなかなか分かりづらいところをそろって指摘するのは、多分田中にその傾向(打球に対するスタートの悪さ)があるからなのだろう。

 17日のヤクルト戦は9回の星野修のエラーが連鎖反応を呼んで敗れた。19日の横浜戦は今岡がフライを捕り損なって逆転の憂き目にあっている。阪神のセカンドは受難の季節を迎えているが、隣を守っている田中も安閑とはしていられない、というところか。

 6連敗中は13打数3安打ながら4四球を選んでいる。攻撃面では試合慣れがプラスに表れているのだから、肝心の守りにもそれを生かしてほしい。田中秀太、阪神ファンの間ではその名はすっかり定着した。しかし“実”を伴わせるのは、まだこれからのことなのだ。

(編集委員)


2000年5月21日付紙面掲載 
Home