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広島 9―5 阪神 (5月7日)


2000年の戦い
井関真


連載目次

ミラー、8回から登板“狂い”

「9回」想定…本来の投球できず

 3連勝の夢を粉々に打ち砕く“凶弾”だった。9回裏、5―5の同点に追いつかれて、なお無死満塁。抑えの切り札ミラーが投げ込んだ149キロの直球を浅井が激しく打ち返す。まがまがしいばかりに鋭い打球は、前進守備のライト・タラスコのはるか頭上を越え右翼席へ飛び込んで行った。劇的な大逆転、サヨナラ満塁本塁打…。

 5―4で9回裏を迎えたところまでは、阪神ペースの流れだった。星野伸が初回先頭の木村拓に本塁打を浴びる立ち上がりだったが、2回には田中のタイムリーで同点に、6回にはこの田中が1号3ランを放って勝ち越し点を奪った。これはその裏、取り返されてしまうのだが、8回には代打大豊の起用が的中して5点目をもぎ取るタイムリーが飛び出した。

 勝負所と見たその裏は、さながら一人一殺の継投。吉田豊、伊藤、遠山、ミラーと1イニングで4人の投手をつぎ込んだ。ただ、細切れ継投成功で広島の反撃を封じ込んだこの8回裏に計算違いがあったとすれば、それはミラーまで投入したところか。伊藤が森笠にヒットを打たれて、ミラーの出番がワンポイント早く訪れてしまったのだ。

 抑えは気持ちのコントロールが、球のコントロールと同じほど難しい役目だ。自分で試合の流れを読み、出番を計算して、気持ちを高め、コンディションを整える。もちろん、8回裏から登板することも頭の片隅にはあっただろうが、従来のパターン通り9回に登場するゲーム・プランを思い描いていたことだろう。

 そのわずかな誤差が、9回のミラーを微妙に狂わせたのだろうか。木村拓を歩かせ、東出には追い込みながら左前に打たれ、玉木朋のバントを処理ミスした。ベンチに残った野手は福地と朝山だけという総力戦を仕掛けてきた広島の執念に、ミラーは本来の投球ができず、最後は苦し紛れにストライクを取りに行き、崩れて行ったのだった。

 総力戦の広島とは裏腹に、阪神はカツノリ、和田、今岡、星野修、佐々木、檜山ら控え選手を残したままで敗れ去った。この日に限っては少し惜しい気もするが、これは多分喜ばしいことなのだ。平尾や田中が打撃好調の波に乗っているからそうなるわけで、攻撃面の備えが相当に分厚くなっている。奇跡的な“暗転”を、やがて取り返す武器は残っているのである。

(編集委員)


2000年5月8日付紙面掲載 
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