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阪神―中日<雨天中止> (4月15日)


2000年の戦い
苗村善久


連載目次

的場スピードに慣れろ

誰もがブチ当たる壁…

 ドラフト1位であるから、期待の新人であるには違いない。ただ的場寛壱内野手は、順調とは言い切れないプロ1年目を送っている。1軍登録即スタメンで、デビューしたのが11日の巨人戦だった。甲子園の開幕試合。華々しい舞台だから、どんなささいな活躍でも、大見出しになったはずだが、それすらままならなかった。マウンドには、球界を代表する投手の工藤。少々、荷が重かったというのが実情だ。

 とにかく、バッティングをさせてもらえない。「打つ」という風情でなく「当てるのがやっと」という彼の心持ちが、如実に表に出ていた。つまりは、プロのスピードについていけないのだ。

 「まだまだ、自分のタイミングで打つまで時間がかかるかもしれんね」。野球評論家の花井悠さんは、的場の打撃にプロ入り直後、どの打者もブチ当たる壁を言う。花井さん自身もそうだった。「オレは社会人では、全日本のクリーンアップも打ったことがある打者やったんやで」。それが西鉄に入団した直後にショックを受けた。「サイちゃん(稲尾和久氏)が打撃練習の相手になってなあ…」。

 今でこそ、主戦投手がフリー打撃投手としてマウンドに立つことはないが、昔は調整のために投げた。稲尾さんも同様で、打席にいたプロ1年目(57年)の花井さんは「むこうは自分の練習だから、ビュンビュン投げてくる。こっちは、これがプロの投手のスピードか、と自信なくしたで」。肝をつぶされたという。「もう、プロでは飯を食っていけない、と思った」とも。おそらく、工藤、メイと対戦して5打数0安打の的場も同じように自信を喪失したにちがいない。

 プロのスピードに慣れる。これは何も打撃だけではなく、守備にも当てはまる。「久慈なら、何本かショートゴロにしてましたなあ」とは、的場の出場した巨人戦2試合(11、12日)を見た吉田義男さん(日刊スポーツ評論家)の感想だった。とにかく投球にしても打球にしても、プロのスピードを脳裏に焼き付け、それに対応する動きを習得することが第一。それが吉田さん、花井さんに共通した打開策ではあった。

 雨で中止となった中日戦。的場はこの日、甲子園でひととおり通常メニューをこなした後、2軍落ちの通告を受けた。が、落胆することはない。手元で伸びる工藤のプロの投球が、まだ彼の頭にあればしめたもの。やるべきことをわかっての、2軍落ちなら未来は明るい。

(野球部デスク)


2000年4月16日付紙面掲載 
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