
新庄送りバントが 反発力の象徴
全員の姿勢が接戦に結びついた
延長11回裏、無死満塁。進藤の打球は横っ飛びしたセカンド平尾のグラブの先をすり抜けて、中前へ転がっていった。サヨナラ負け…。開幕戦には無情の決着がついてしまった。
それにしても意外な光景が、随所に散りばめられた試合だった。頼みの開幕投手・星野伸がけん制死で1死を取っただけで、横浜打線に打ちのめされる。1回にいきなり5点のビハインドを背負う戦い。
1991年から阪神は開幕戦には9連敗している。その間の得失点は19―61。つまり2点程度は取れるが、6点以上を奪われるというのが平均的なパターンであった。そのデータからすれば、5点は絶望的な失点だ。駒田に打たれて3点目を奪われると、早くも左翼席からメガホンが投げ込まれる不穏な空気さえ流れた。
ところが2000年のタイガースは、したたかな反発力だけはのぞかせたのだ。3回に今岡の二塁打を足場に1点を返す。6回には平尾が本塁打、坪井、和田、新庄の安打などで同点とし、矢野が右翼ポールに当てる逆転アーチを描いたのだった。こんなビッグ・イニングを作れる攻撃力は、開幕前にはだれも予想していなかった“うれしい誤算”であった。
もちろん平尾と矢野の本塁打は、この試合においてはかけがえのない攻めではあった。しかし、全員がハンディをハネ返そうとした姿勢が、意外な展開に結び付いたのではなかったか。その象徴的なシーンは、実は4回と8回にあった。1―5の4回は先頭で打席に入ったタラスコだ。彼は川村の初球にセーフティーバントを試みている。そのとき、記者席には失笑がもれたが、タラスコの何とか出塁したいという思いだけは十分に伝わって来た。そして8回。無死から和田、タラスコが安打を連ねて一、二塁。ここで4番新庄が打席に立った。ベンチが新庄に与えた作戦はバント。彼はそれを忠実に守って、三塁前に絶妙の送りバントを転がしている。
4番にバントというのは、常識的に見れば邪道かもしれない。しかし、4番でさえも簡単に犠牲バントさせられる打線というのは、ベンチからすれば、案外小回りが利いて便利な面もあるだろうし、それが今の阪神の姿なのだ。開幕の大一番はつまずいたけれど、反発力を示す機会だけはいくらでも残っている。
(編集委員)

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